「提案した通夜」
「通夜の起源は釈迦入滅のおり弟子達が釈迦の亡骸を囲んで一晩中釈迦の教えを語り明かした事に由来します。
だから僧侶の読経は要りません。家族全員が集まり、お父さんの好きだった音楽を掛け、好きだった物を全員で食べ、写真や動画を見ながら父の思い出を語り合う。
故人の良い事ばかりでなく問題点や苦言でも構わない。
とにかくお父さんを話題に過ごしてくれたら最高の通夜になると思う。
お父さんが好きな曲はたった1曲『かぐや姫の歌った「僕の胸でおやすみ」』だそうで家族だけでなく従弟もきてくれたそうす。
従姉たちは初めて聞いた曲なのに覚えて帰ったというほど何十回も流したようです。
写真やアルバムを見て語り合う他、今はスマホでも動画が撮れますし「声」が残せるのが良い。
またお母さんの友人から葬式までの日程が長くない?と言われたようで理由を聞かれたので――、
「初めて来た日、家が好きな人だからゆっくりさせてあげたいって言ったの覚えてますか? だから1日余分に日程を組んだだけです」
「そんな事まで覚えてくれてたんですね。初めて来てくれた日、武井さんに叱られた時そんな風に考えてくれる葬儀屋さんがいるのにビックリし、その通りだと思ったし自分のことのように涙を流して話してくれた言葉は忘れません」
僕も千明もこんな言葉を聞いたり心底喜んでくれる家族が見たくて踏ん張っているのかもしれません。
夜中に起こされ自分の都合で休むこともできず徹夜になって辛くても次の仕事は容赦なく入ってくる。
でも我々が動くだけで助けられる家族がいるのも事実その思いが通じた時は我々の心も少し浄化される気がします。
この葬式では個々の家族が持つ条件や心情など知らなければ、その家族にとって最善の葬式施行は出来ないと教えられました。
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