前回ドライアイスの追加はあっても交換はあり得ないと書きましたが、ドライアイスの効率的な使い方、無駄な使い方が分らなければ理解できませんので、その辺りについて書きたいと思います。
ドライアイスは二酸化炭素を固めたもの、約-80℃、酸素より重く気化した二酸化炭素は棺内に溜まり、故人の身体に顔を埋めた態勢でいると二酸化炭素中毒死も起こり得る危険があると認識しておきましょう。
合掌は外して当てる
前回ドライアイスを当てる回数を書いた後で死体保全の正確な知識を伝える必要があると気付いたもの、当てる場所が最適で無かったり、どうでも良い場所に置かれる無駄使いも費用は嵩みますから、葬儀屋の言動が必ずも正しい訳ではないと判断できる程度の知識は持っておかれると良いでしょう。
まず多くの病院が行う合掌は仏教作法、信仰の観点と死体状態によっては疑問ですが、その点はさておき、肘を張り胸の上で合掌を組み、そのまま硬直すれば棺に納まりませんので、ベッドからストレッチャーに乗せ換えた時点で肘を伸ばし合掌は下腹部辺りまで下げます。
納棺後そのままドライアイスを当てると腐敗進行の早い腹部の冷却ができませんので、合掌は一旦解き両手は身体に沿わせた態勢で腹部と下腹部を完全凍結、もし合掌を組んだまま冷却すれば手指は凍結、されど肝心の腹部に当たりません。湯かん等で合掌する必要あれば再度合掌を組むのは容易です。
腹部の次は後頭部~、温かい部屋の安置は頭部冷却で脳の腐敗と顔の黒ずみも防げますので、当支援センターは後頭部がスッポリ納まる安定枕付きの搬送シート使用、ドライアイスをV字形にして頭を乗せられ、搬送時も頭部がグラグラせず安定した状態で搬送でき、見た目も豪華になります。
ドライアイスを長持ちさせたい時は、100均でも売ってる保冷剤を凍結させてドライアイスの上に乗せれば、半日程度の違いは確実に出ますから費用が抑えられるでしょう。布団安置なら故人の身体を挟んで上下に100均の保温シートを当てれば冷却効果は倍増、布団は保温具ですから死体保全と相反するものです。
葬儀屋文章の嘘
時々身体を「凍結させないよう綿花で包んで当てます」と書いてあるのを見ますけど知識が無いか『嘘』です。ドライアイス使用とは凍結させる事で腐敗進行を遅延させる事、一般的に凍結は摂氏0℃ですが、人間の身体は塩分、蛋白質、脂質などありますので若干低温となるが-3℃なら凍結します。
凍結させないとはマイナスにしませんと言ってるのですから、-80℃のドライアイスを当てる必要はなく、100均でも売ってる保冷剤で充分、確かに保冷剤で対処できるケースもあるけど、凍結させい為に綿花で包むはありません。ちょっと考えれば誰でも分かるレベルの「嘘」を堂々と書く心理が理解できない。
凍結した皮膚は薄茶色に変色しますが解凍すれば元の肌色に戻り、体脂肪の多い人は凍結し難く、腹水が溜まってる場、生体水ですから皮膚は凍結しても、腹水まで凍結する事は殆ど無いでしょう。
上記以外の死体はドライアイスを24時間当てれば内臓まで完全凍結、納棺安置なら完全解凍まで24時間ほど掛かるので、毎日追加する必要はなく納棺安置なら1回で60時間まで対応可能、保全・費用・などの観点からすると布団安置より納棺安置が優れていますが、その辺りは別項で書きたいと思います。
顔の横に置くドライアイスは意味がない
故人の顔から数cm~10cm離した両側にドライアイスを置く葬儀屋が多く、納棺安置なら棺内冷却効果は間違いなくありますが、布団安置は見た目の清涼感はあっても費用対効果は得られません。試しにドライアイスの横1㎝の場所に指を置いても凍えるような事はなく5cm、10cm離れた場所に置くなど論外です。
更に布団安置は冬場でも部屋暖房は使えず、夏場は強冷房で冷やす必要がある事から、いずれも安置してある部屋で長時間滞在は難しく、強冷房にすると障子、襖は結露の湿気で開かなくなし、使用した布団を処分する家族も多いから布団安置のメリットが見えてこない。
納棺・布団・冷蔵庫安置
納棺安置・布団安置・冷蔵庫安置が主な安置方法で、布団安置は上記のようにデメリットが多く、冷蔵庫安置は機種により—20℃設定もあり、温度を下げれば全身凍結も可能なので腐乱死体には適しているとも言えますが、一般的には4℃前後で保管されますので、腐敗は進行し死臭が出る確率が高く腹部にはドライアイス装填すれば最善の安置と言えますが費用面で高額になる可能性があります。
だからと全身凍結した場合、解凍時は結露で全身びしょ濡れ状態なので、誰にも会わないままの火葬以外は選択し難い安置方法、第一に死体保全、続いて途中で故人の顔を見たり、湯かん等の行為、更に費用面など全ての面を考慮すると最も優れているのは『納棺安置』です。
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