初めての葬祭扶助は巨漢の故人

各種手続き
この記事は約3分で読めます。

法人設立から3年2011年3月1日第一目標の『5万円火葬支援パック完成』翌日一度伺ったことのある隣接市の筋ジストロフィーの女性から連絡。

自分を介護してくれてる人の息子さんが突然亡くなりお金が無いので火葬だけして欲しいとのこと。

遺体は自宅との事でドライアイスと自宅安置用具など準備を整え車で40分ほどの借家の自宅に到着する。

1階の6畳は物があり半分使えず空いた半分に敷いた布団に大きな身体の男性が横たわっており一瞬で6尺棺では無理と瞬時に判別できるほど大きい。

母親らしき人と簡単に挨拶し火葬だけの葬式で良いか確認をしてから、故人の事を聞く、
「故人の身長と体重は分りますか?」
「身長185cm体重150㎏で大きいよね」

布団を剥いでみると自身の重さで横に広がり更に『でかい!』最大の棺でも入るかどうか――、

胸の上で合掌が組まれ肘が横に張りこのまま硬直したら絶対に入らない。

「合掌は警察官がしてくれたのですか?」
「はい、そうです」

「この状態では棺に入らないので紐か帯のような物ありますか?」

お母さんは2階から帯揚げを持ってきてくれました。

合掌を外し腕は身体の前で上腕部を縛ります。

それでも既製品では一番大きな六尺五寸ワイド棺を使用するしかない旨を伝え完成したばかりの5万円火葬支援パックの説明をしていると、

「うちは生活保護所帯だからお金無いし出来るだけ安いのでお願いしたい」

「ん!?今うちは生活保護って言いました?息子さんと2人の世帯が生活保護?」

「うん、確かそうだけど・・・」
「なら市役所に行って確認しましょう。今回の葬式代は全て支給されるかもしれません」

「えっ、そうなんですか?」
まだ正確には分りませんがと前置きして、

「3級市だから最大180,300円上限の葬祭扶助が受けられ火葬に必要な費用と警察が依頼した死体検案料金も計上できるはずです」

火葬後では請求できませんから、すぐに市役所の福祉課に行き息子さんが亡くなった事を伝えると葬祭扶助申請書を渡された。

事前確認しておこうと確認してると市の職員から、
「ドライアイスは認められてないんですよ」

『はぁ?なに言ってんだこいつ』と思いましたが反論すると長くなるので聞き流し申請の流れだけ確認すると検視した病院に死体検案書を取りに行きます。

病院に行くと検案書35,000円、死亡診断書なら5,000円~7,000円なので5倍の料金ですが、死亡診断書のコピーを警察に持っていくため支払います。

立て替えるけど最終的には一銭も掛からないと、お母さんに伝えるとホッとしたように言いました。

「生活保護なら火葬代も出るんですね。助かります」
「ちょっと違う気がするので説明しておくね」

「生活保護は葬祭費が出る訳ではありません。生活保護はあくまで生きてる時に支給されるもので基本的に死後費用は出ません」

「但し今回の場合で言うと息子さんの葬式をするお母さんが生活保護だから支給される。息子さんに支給されるわけではありません」

ドライアイスの件は後日請求書と明細を持っていくと再度ドライアイスの話が出たから最低1回の使用は認められてるから調べるよう伝え対処しました。

火葬前日、ご飯も沢山食べるだろうと事務所で3合のご飯を炊き一つは海苔、一つは梅干しを入れて2個の大きなおにぎりを棺に入れました。

この地域は出棺時に庭で棺をグルグル回す習慣があると近所の人は言いましたが持ち上げるだけでミシッと音がするほど大きな故人です。

男10人でもやっと持ち上がるほどですから今回は止めて頂きました。

通常90分の火葬時間が3時間待ち、身体が大きいと火葬時間も倍掛ると分り逆を言えば小柄で細い人なら60分後には拾骨できるということです。

マニュアル通りに時間を伝える職員の場合、あとで僕の想定時間を家族に伝えることもあります。

この葬式から学んだのは『葬儀屋は葬式だけ出来ても駄目、人の死に関するあらゆる知識が家族の生活を守ることに繋がる』でした。

僕が死体、死後手続きの知識を持ったのは、この葬式がきっかけかもしれません。4月の合同散骨に参加され母親と兄で散骨しました。

コメント