2010年9月、高崎市在住のお婆ちゃんから散骨の話しを聞きたいとの電話、電話より直接逢って話したほうが互いに理解できるので来社できるかを確認、すると自動車は無く病院に行くにも手押し車と聞かされ出向くことになりました。
数日後、聞いた住所を探すと戦争で空襲を受けなかったのか、密集している住宅街の中に立つ1軒屋、中に案内されると部屋には色んな物が置いてあり、万年床の上には飼い猫が自分の場所だと主張、我々の存在など意に返さないようです。
コタツ布団を外したテーブルの空いてる場所を探して座り簡単な挨拶をしてから、お婆ちゃんの話しを聞かせて貰うと、隣の部屋には昨年埼玉県で亡くなった次男の骨壺が置いてあり、自分が動けるうちに何とかしておかなければと思っているそうです。
その話を食事を運んでくれるNPOの人にしたところ、県庁のNPO事務局から2枚のパンフレットを持ってきてくれた1つは寺が運営するNPO法人らしく、問い合わせて送付された見積書は17万円ほど掛かり、更に毎年数千円の管理費が掛かるのが分かったそうです。
年金暮らしの自分はとても無理、そこで8万円と書いてあった当方に連絡をされたようですが「やはり毎年費用が掛かるのですか?」と聞くので毎年の管理費は一切ありませんと伝えてから、お婆ちゃんの生活状況を聞かさせて貰うことにしました。
息子さんが1人いるけど都内在住、家は親戚の所有物で家賃を払い、電気水道光熱費も全て年金だけで生活されていると聞き、楽な生活で無いのは火を見るより明らかです。
隣に座っている千明に散骨費用を下げる方法はあるか確認すると、少し考えてから「粉骨作業を自分達で行い容器類を省けば最大3万円までは可能だけど、粉骨にする機械の価格が全く分からないので高額だった場合は手作業で粉骨にする覚悟が必要と言われた。
武井「お婆ちゃん、今聞いた通り3万円までは可能だそうですから5万円、これが今の我々が出来る最低料金なんだけど、どうされますか?」と聞くと「はい、結構です来月半ばに年金が入ったらすぐに連絡させて頂きます」と決定、お婆ちゃんも笑顔でしたから安堵して戻ってきました。
事務所に戻るとホームページに掲載してある散骨代8万円→5万円に変更、お婆ちゃんだけ特別は不公平ですから全て同額に変更してから、粉骨機械をネットで調べると最低でも40万円~、散骨は絶対に増える自信はあったので、先行投資は止む負えないと判断します。
心が落ち着かない、、
それから数日過ぎてもお婆ちゃんとの会話や部屋の中、手押し車を押す姿が頭をよぎり、10日、20日が過ぎても心が晴れないというか落ち着かない日々が続いた10月、僕と向かい合って座る千明に言います。
武井「俺さぁ、5万円で散骨引き受けたけど、お婆さんから5万円受け取ったら後で後悔するような気がするんだよなぁ、、どうするか?」
千明「で? どうせ何か考えているんでしょ!?」
武井「うん、遺骨を自宅に抱えて心を痛めている人って他にもいるんじゃねぇかなぁって考えると、毎回は無理だけど1度だけ全て込々1万円散骨ってどうかな?」この数日考えてきた事を伝えます。
千明「なるほど、その旨を従兄(散骨場所有者)に伝えれば全く問題ないと思うけど込々って?」
武井「うちの駐車場集合、バスで散骨場まで行って散骨が済んだら戻って解散、送迎代も全て含めた合同散骨の参加費が1名1万円って感じかな」
千明「あー、なるほどねぇ、それ良いかも」
貸切のバス代すら分からないまま『1万円合同散骨』が決定、すぐに電話で来年4月8日(花まつり)を目指して1万円散骨を企画するから待って欲しいとお婆ちゃんにも伝えると「ありがとうごさいます」と電話でも分かるほど嬉しそうな声が聞けて僕の心も落ち着きました。
良き理解者との再会
この辺りが僕の良さでも悪さでもあるのですが、バス代も分からず、利用者の有無すら分からないけど、走り出す完璧な見切り発車、じっくり考えると対象は高齢者が多いアナログ人間なのでネット宣伝は効果が薄く、墓が建立できないからの手元供養なら他人様に話したい事でもありません。
お婆ちゃんに伝えた以上中止は出来ませんから県庁内にあるNPO事務局に行くと、カウンターを挟んで数人の人達が話している中に設立当時事務長だった方もおられたので「お久しぶりです」で声を掛けると「あ、どうも」とニコニコされ「今日はどうしたの?」と聞かれた。
そこで今回限定で1万円散骨の実施を考えている旨を伝えると、なら後で良ければ記者クラブに同行してくれると言うので、開催趣旨を正確に伝えておく必要があると考え場所を変えて話しをします。
男性「それにしてもバス代込みの1万円は安過ぎるんじゃない? どう考えても赤字でしょ!? 」
今まで何度か顔を合わせてはいましたが、あんしんサポートの成立主旨を正確に説明した事はありませんでしたから、良い機会だと思って一通り説明しました。
団塊世代が2030年80代の終幕期に入るが、今の日本を支えてきた人達、働いている間はずっと税金を払ってきたのに、働けなくなった終幕後はしらんぷりが今の行政、これっておかしくないですか?
葬式をしろとは言わないけど、せめて骨壺に納まるまでは「今までお疲れ様でした」の感謝の念で行政が無料で行っても罰は当たらないでしょ!? でも行政は全くしらんぷりだから国保からの葬祭費5万円で骨壺に納まれる火葬支援パックを目指してるんです。
もっと言えば火葬して遺骨を寺の墓に入れたら最低20万円が現実、だから散骨という選択肢もあると分かれば死後費用の不安要素が減るじゃないですか――、僕の行動は全て対行政で葬儀屋ではないんですよ。
「なるほどぉ、僕が話すより武井さん自身が話したほうが迫力も説得力もあるから、記事になるかは分からないけど少し偉い新聞記者を紹介します」と言ってくれました。

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