「8」霊柩車は試験や許可が必要

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車好きな男性は多いが僕は全く興味がなく運転が楽で安全なら何でも良いと思う人間だから霊柩車には許可や試験があるなど全く知らない。

サラリーマン役員時代、都内での会議に部下数名を連れていく事になり部下たちが、
「武井さん、トランク開けて貰っていいですか?」
「あいよー」

鍵でトランクを開け各自荷物を入れると出発する。
「なんで鍵で開けたんですか、故障ですか?」
「ん?トランクのことか?」
「はい」
「鍵で開けなきゃ何で開けるんだ?」

一瞬沈黙が流れた直後、車内は爆笑に変り、
「トランク開けるボタンあるでしょ!?」
助手席に乗ってた部下が「これです」と指さした。

途中高速パーキングで試してみたら本当に開いた。他にもボタンはあったが何だか分らないから触らない。車好きには信じられないだろうが本当のことだ。

だもん霊柩車に許可証が必要など知らず出品者自ら霊柩車を運んでくれた時に教えられた。
「霊柩車は初めてですか?」
「はい、葬儀屋自体が初めてですけど――、」
「ところで霊柩車の許可証は持ってますか?」

「許可証って?車検受ければ乗れるんでしょ?」
「違いますよ、まず陸運支局に申請し横浜での試験に合格すれば乗れます」

「そ、そうですか何をどうすれば良いんですか?」
「霊柩車は一般貨物自動車運送事業許可証が必要ようは運送屋さんの許可です」

「群馬だから横浜の関東陸運局で試験を受けて合格しなければ許可はでません」
「1か月も勉強すれば受かる程度ですよ」

「って事は動かすまでに数か月掛るって事ですか?」
「10月だから2月の終わりか3月には動かせますよ」
「はぁ、そですかぁ、色々ありがとうございました」
「何か分からないことがあったら連絡してください」

こうして帰ったのですが半年近く動かせず雨ざらしだと稼働する前にピッカピカの車体がくすんじゃうと思い布カバーで覆うカーポートを注文しました。

ナンバーが無いので駐車場の中で乗ってみると車は問題無いけど手続きは大変そうです。
「なんか聞いてるだけでスンゲー大変そうじゃねぇ」
「でも買った以上は走れないと意味ないですよ」

ネットで調べると行政書士の手続き代行30万円から50万円を見て結構大変かもしけないと思った。

更に登録免許税、車検費用、任意保険等を全て人に任せると150万円ほど掛るが、全て自分で行えば車両価格も入れて100万円で済む試算になる。

余裕は無いく当然全て自分達で行うしかありません。

車で5分ほどの所にある陸運支局に行くと、つなぎ姿の人達が県内全域から車検に来ているらしい姿を見横目に2階カウタンーに行く。

一般貨物自動車運送事業許可証の申請方法を聞くと
・車庫が必要
・車庫前の道路状況図
・仮眠室など結構細かい規制がある

一定額以上の預金も必要で横浜の試験は60点以上と簡単そうですが、全て運送業の法規なので勉強しなければ絶対に受からないと言われた。

僕より時間のある千明が試験は担当し毎晩参考書を読んで勉強してくれたお蔭で12月中旬の試験は無事合格してくれました。

霊柩車納車から数日後注文したカーポートが届き組立ようとしますが駐車場のアスファルトが古すぎてアンカーボルトでは止まらないと言われた。

どうせ数か月は乗れないからカーポート用の布で包めば雨風はしのげると駐車場の片隅に2人で一生懸命に包んでおきました。

試験の合格証は年明け届き各手続き3月1日には始動できそうです。

4か月ぶりで霊柩車を包んだ布を取り去るとシートが空っ風にあおられ車体を擦り続けたからでしよう。

嫁に来た時はピッカピカで真っ黒だった車体は、一気に老け込み擦り傷だらけで遠目はグレーに変身した姿を見たら溜息しか出ません(ふぅ、、、 -_-;)

気を取り直し数か月ぶりで運転してみよう運転席に座りキーを差し込んでエンジンを回すがウンとも、スンとも言いません。

窓の外を見ると千明がニコニコしながら見ています。再度エンジンキーを回しますがシーンと静か‥‥バッテリーご臨終の瞬間でした。

バッテリーとタイヤ交換は想定内ネットでバッテリーを買い仮ナンバーを発行して貰いユーザー車検の予約をすると車体磨きの工場に入れて数日後。

また嫁に来た時と同じようにピッカピッカになった所でストレッチャーの動作と理屈を確認しながら何度か練習するが中々良くできてる。

ちょっと見は建築現場のパイプのようで安っぽく見えるが全て揃えると当時の定価で70万円もします。

動きの理屈が分ったので千明と交代して練習させる。霊柩車のハッチバックを開けストレッチャーを引き出した途端ガッシャーン!

手前の足は出てますが故人頭部側の足が出ないまま引き出されたようで「あれ?」と言い再度同じことしますがガッシャーン!

「おいおい、故人乗せてたら頭から落下だぞ」
「ですよねぇ、もう一度やってみまーす」
続いて行うがガッシャーン!「またかい・・・」

「あれー何でだろう、よしゆっくりやればいいんだ」
一人納得したように慎重にゆっくり引き出すがガッシャーン!誰か乗せる前に壊されそうです。

「もしかして、最後までレバー握ってねぇか?」
「はい、しっかり握ってます」
「だからだよ‥‥」

漫才のような練習でしたが理屈が分ってからはさすがにガッシャーン!は無くなりました。

更に便利なスクープストレッチャー購入(縦割りで故人を寝かせたまま両側から差し込み持ち上げられる)

オークション落札から5か月後ようやく営業ナンバーを付けた霊柩車として動けるようになり2011年3月1日念願の『5万円火葬支援パック』完成です。