「3」不思議な出会いの始まり

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前橋に戻ると葬式関連をネット検索しますが葬式については???の連続でした。

『葬式は宗教毎に全て違い何が正しいか分らない』
『堂々とマナーと書いてあるが、僕からみるとマナーとは思えない自称評論家と葬儀屋ばかり』

『更に結構狭い地域毎の習慣しかなく、日本全国統一された決まりは殆ど無いのが葬式のようだ』

この段階で疑問と不信感が強くなり『何でもあり!?』と思い始め一度葬儀社の人から直接話しを聞いてみたいと経営する美容室店長に聞いてみた

「お客様の中で葬儀社勤務の人っていない?」
「それなら、たくさんいますよ」
「もしかして女性?っていうか小母さん?」
「そうですね、ほぼ小母さんです」
「なら面倒くさい小母さんは嫌だから自己主張の強くない人が来たら一度事務所に連れて来てくれない」
「はい、それらしい人が来たら声をかけてみます」

対象の人が来れば声を掛けてくれるだろうから、それまで調べられるだけ調べようと再度ネットや本で『葬式の事』『仏教、神道、キリスト教の事』更に『葬式で使用する道具類』など調べました。

不思議な事に棺が何処で売ってるか分りませんし仕入れ価格も分りません。これだけネットが普及しても分らない事はあるんだと驚きました。

暫くして店長に連れて来られたのは金縁でピンク系のレンズいかにも小母さんって感じの女性でしたが話すと癖はなく聞き上手で僕の意見も聞いてくれました。

内心「素人さんは――、」と言われる覚悟でしたが現行葬式の批判が大半にも関わらず「そうですよね」「私もそう思います」と肯定され「また寄ってください」と調子に乗ったのが2番目の岐路です。

最初の岐路は『父親の最後を看取ってくれた人に逢いに行った事』逢った事もなく逢いたいと言われた訳でもなく逢う必要も無い。

妹のように少し腹立たしい人と思っても不思議でないのに何故か逢いに行ったことでしょう。

その後、何度か事務所に顔を出してくれ、その度に好き勝手を言い続けたある日、その女性から
「オーナーちょっと良いですか?」
「あ、はい、なんでしょう」

「オーナーの話しを聞いてると毎回その通りと思う反面、私は会員さんを騙してるんじゃないかって思い始めたら営業が出来なくなってるんです」

「あぁ、そうなんですかぁ、すみません。」
「そこでお願いなのですがオーナーみたいな人が葬儀社をしたら助かる人達が沢山いると思うんですけどオーナー葬儀屋を始めてくれませんか?」

「僕が葬儀屋? 死体見たくないし葬儀屋嫌いだし」
「そうですよね‥‥」

いやぁ困った調子に乗って好き勝手言ってたせいで仕事が出来なくなったのは俺のせいだ。

でも葬儀屋なんて絶対嫌だどうすれば良いだろう。

「まず葬儀業界の人達に話しを聞いてみましょう」
「はい、明日会社から出たら来て良いですか?」
「良いですよ、何時頃ですか?」
「10時30分には出ますから11時前だと思います」
こうして翌日から葬儀屋と寺周りが始まるのですが、これが千明(ちぎら)との出会いなのです。

今だから書けますが翌日から動く事といっても何をしたら良いか分らず色々考えたすえ思いついたのが『葬儀屋紹介業』でした。

僕がこれだけ調べても分らない葬儀業ですから一般の人達も同様だろうし葬儀の何が分らないかさえ分からない人が大半です。

なら自信を持って良い葬儀屋さんが紹介できれば千明一人位は食えるだろうと考えての行動です。

周辺の葬儀屋と寺を周ってみましたが半数は話しが出来て半数は門前払いに近い対応なのに行った葬儀屋の全てが同じ回答には驚きました。

「うちは喜ばれてますよ」
これ以外の返答はありません。さすがに人の嫌がる仕事をする人達は人間ができてると感心しました。

寺の住職も同様でした。
「布施はお気持ちですから――、」
「余裕の無い人からお布施は頂けないでしょう」

こんな話しを聞けば誰だって素晴らしいと思うし自信を持って紹介できる葬儀屋と寺はいくらでもあるから商売は成功すると思いました。

葬儀屋と寺の実態が分ると葬式した人達100名以上に直接話しが聞けました。ところが初めは当り障りの無い受け答えですが時間が経つと葬儀屋と寺の苦情に変化「葬儀代が高い」「お布施が高い」と言うのです。

我々が聞いた「うちは喜ばれてますよ」「お布施は気持ちですから」と葬式した家族は真逆の反応でどちらかが嘘を言ってる訳です。

家族が僕に嘘をつく理由は無いから葬儀屋と寺は嘘つきと分り闘争本能に火がつきました。

とは言え葬儀屋をする気はなく紹介できる葬儀屋探しの範囲を拡大したが良い葬儀屋は見つかりません。

千明が食える仕事を考え軌道に乗ったら手を引くつもりですから良い葬儀社が見つからない事も考慮して自社施行もできるNPO法人の申請を4月にしました。

法人設立となる6月うちの奥さんと同じ職場の人のお爺ちゃんが亡くなり余裕も無いので安く葬式できないかと連絡がありました。

まだ紹介する葬儀屋はありませんが葬式の実際を見るには良い機会、葬式は何処でも大差ないだろうと近くの葬儀屋に行き紹介料3万円で依頼、この安直な考えが大きな間違いと知ることになる。つづく