「7」初施行は最悪な葬儀屋

一銭も要らないお葬式
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葬式の体裁を整えるとは、読経して戒名を付けて貰う葬式ですから菩提寺の布施確認、すると45万円と分かりましたが、叔父さんが出してくれるなら問題ありません。

改めて打ち合わせを始める頃になると親戚が集まり始めたので、葬式依頼と布施の値引き交渉に行きましょうと叔父さんを誘い菩提寺へと向かいました。

当時、宗教者は弱者の味方と思い込んでましたから、葬儀支援センターの者ですがと当然のような口ぶりで45万円を15万円に値引きして貰うことに成功、余りに堂々とした態度でしたから住職は行政の人間だと思ったのかもしれません。そうで無ければそこまで値引きはしないでしょう。

30万円値引きさせ叔父さんもニコニコ顔で意気揚々と戻ってくると、親族が増えており打ち合わせは後にして欲しいと言われたが、何を決めれば良いかさえ分かりませんでしたから、これ幸いと一旦事務所に戻って再度夜に伺うことにしました。

何を確認すれば良いか調べたり、前橋斎場の使用方法を確認して書面にしながら打ち合わせに必要な項目を明確にしておくと、夜10時を過ぎての連絡で葬家に向かい打ち合わせ再開、全ての打ち合わせが終わると日付は代わり外はどしゃぶり、事務所に戻って依頼内容を整理します。

何時間も待っているだろう葬儀屋さんに申し訳ないと思いながら電話、すると「今組合の会合で伊香保温泉に来ているから明日戻ってから聞きます」の言葉に呆然ぼうぜん、安置後慌てて帰った理由が判明、気づけば空が少し明るくなり始めた午前4時、初めて尽くしの1日が終わりました。

葬式前日の午後、故人の手足を拭き白装束を整える湯灌ゆかん納棺の義、施行側としては初めての体験で少し緊張しながら安置してある部屋の隅に立ち待ってました。

葬儀屋の社長から「只今より湯灌納棺の義を始めます」の声、『あれ?』家族親族全員が布団の横に立ったまま、座らない作法もあるのかと周囲の人達を眺めていると突然「合掌!」と社長の声、慌てて合掌すると続いて「直れ!」と号令が掛かります。

『お前は軍隊長か!』と内心突っ込みを入れるが声に出せない。次は手足を拭いて白装束を整えるだろうから座るんだと思っていると「棺の準備をします」と葬儀屋さん2人で棺を布団の横に置く『そこに置いたら手足拭くのに邪魔じゃねぇ?』と思いつつ待機。

「皆さんでシーツの取手を持って棺に入れてください」『えーっ、湯灌しねぇの? つーか納棺してから湯灌なの?』そんな僕の心の叫びなど意に返さず「これから白装束を手足の上に掛けて頂きます」『ん?手足に掛ける?』見ると、自分で切ったのか?と言いたくなる安っぽい布を持っています。

一般的には「天冠てんかん」「一重ひとえの着物」「手甲てっこう」「脚絆きゃはん」「数珠じゅず」「頭陀袋ずだぶくろ」「足袋たび」「草鞋ぞうり」を各部位に装着するのですが、布切れのようなものを渡しています「これどうすれば良いですか?」と聞く家族に「あ、手足の辺に置いてください」なるほど先程の「掛けて頂きます」はこれか、、、

あっ、という間、最後に「合掌!」「直れ!」と軍隊長の号令で終了、内心では『あり得ねぇ』と思いながら横を見ると息子さんでしょうか、父親と違ってキビキビと動き回っている姿が目に入り『親が駄目だと反面教師で息子の出来は良いんだなぁ』と思った。

家族から順に線香を供え始めたので風に当たろうとエアコンの無い部屋から外に出ると、先ほどの息子さんらしき人の隣に立って「息子さんですか?」と声を掛けた。「あは、違います。僕は葬式のスタッフを派遣する会社を経営してますが今日は人手が足りず来ました」

「あ、社長さんでしたか失礼しました」「いえいえ」と名刺を渡され見ると、隣接市で派遣業を行う会社らしい事だけは分かり『あの親にしてこの子あらずだよなぁ――、』

翌日の前橋斎場

翌日は前橋斎場、受付は式場の外、焼香が終わった人は外に出る造りで3年後に新築される予定の老朽化した建物、1人の若い男性が走り回っていますので昨日逢った社長の社員さんでしょう。司会者も家族との打ち合わせで忙しそう、ところで社長はと探すと、、、居ました居ました。

知り合いの葬儀屋さんらしき人とタバコを吸って談笑していますので、我々は清めをする座敷に行き隣保班の方々に挨拶をして帰ろうとすると「市役所の方は休んでてください」と言われる。市役所でなくNPO法人葬儀支援センターの人間である旨を伝えます。

すると「我々の地区はお茶入れはしませんけど大丈夫ですか?」と言われたので「分かりました。葬儀屋さんに伝えておきます」と式場に戻ると葬儀屋さんは相変わらずタバコを吸いながら談笑中、僕らが見る限りタバコを吸ってるだけでなーんにもしてません。

そこで社長の所に行き「この地区の隣保はお茶いれしないのが通例らしいですよ」と言うと「あ、それ我々の仕事じゃないですよ」この言葉を聞いた瞬間、軽くプチッと切れた口調で「誰の仕事かじゃなくて葬式を順調に終わらせるのが葬儀屋の仕事だろ、タバコを吸ってるだけのあんたがやりゃ良いだろう!」

と軽く怒鳴りはしたけど信用できず、千明にお茶入れの指示、その様子を隣保の人が見ていたようで気を効かせてお茶入れもしてくれ無事終了、数日後5万円ほどの紹介料を持ってきた葬儀屋に言います。

「まともな葬式すら出来ず、やる気がねぇなら初めから受けるんじゃねぇ!」この数日間で溜まった不満の言葉に「やる気はありますよ、、」と呟いた葬儀屋でしたがこの話しには続きがあります。

半年ほど過ぎた頃、嫁さんから「ちょっと聞いても良い?」と言われたので「なに?」と聞き返すと「〇〇さんのお爺ちゃんのお葬式頼んだじゃない」
僕「ん? あー6月のか」
嫁「うん、葬式が終わってから支払いの時、あんしんサポートへの紹介料も請求されたらしいよ」
僕「はぁー? なんだそれ、紹介料は葬儀屋の利益から出すに決まってるじゃん」
嫁「やっぱ、そうだよねぇ、ご主人には言わないでって言われてたけど納得できなくてさ」

まともな葬式も出来ず、自分では何もせず、紹介料まで家族に請求する商道徳すらない葬儀屋に依頼したのは僕自身なので返す言葉もありませんが、葬儀屋は何処も同じではない事と想定以上に信用できないと教えられ、葬儀屋と思われるのだけは絶対に嫌だと意を新たにしたのです。

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